認定こども園設計、幼稚園設計、
保育園設計などの園舎設計
施 設 名 | : | 大関保育園 |
延床面積 | : | 998.25㎡ |
所 在 地 | : | 福井県坂井市 |
構 造 | : | 木造平屋建て |
定 員 | : | 120名 |
竣 工 | : | 2017年3月 |
ウッドデザイン賞2018 受賞
施 設 名 | : | 大関保育園 |
延床面積 | : | 998.25㎡ |
所 在 地 | : | 福井県坂井市 |
構 造 | : | 木造平屋建て |
定 員 | : | 120名 |
竣 工 | : | 2017年3月 |
ウッドデザイン賞2018 受賞
土間のある玄関。飛び石や板を置き、導線を考えて設計したことで楽に行き来することが可能となった。
遊戯室の天井に組まれた木が、さまざまなリズムで光と影を生み出し、荘厳でありながらも木の強さと温かみを示している。
「仏さまの近くでこどもたちに育ってほしい」という地域の方々の願いからスタートした保育園。
子育て支援室は、その願いをまさに象徴する部屋となった。
以下、こどももおとなもうれしい園舎より抜粋
「木×平屋」のぬくもりあふれる、開放的な園舎は、「こどもがこどもでいられる空間」
1960年代に開園した当園は、浄土真宗善能寺の境内にあります。仏様の近くでこどもたちが育ってほしいという地域の方々の願いから当園は始まりました。 以前の園舎ができたのは、1977(昭和52)年。その後東日本大震災が起こり、耐震基準が見直されたため、建て替えることを決めました。2017年3月から、現在の新しい園舎を使用しています。
●自身の「原風景」を起点に、「こどもを守る空間」をつくる
設計する際に掲げたテーマは、「こどもがこどもでいられる空間」です。私がこどものころには、近所のお兄さんや小さい子と一緒になって遊ぶのが当たり前でした。そのなかで、遊んだり、教え合ったり、年上の子に対する憧れを抱いたり、年下の子の面倒を見たりといった日常を通して、さまざまなことを学んだものです。不便な時代に田舎で育ちましたから、暑い日は扇風機にかじりついたり、風が通り抜ける涼しい場所や寒いときはお日様のあたる場所を探したりと……。こどもなりの知恵を働かせて毎日を過ごしていました。遊んでいるうちに、寒さを忘れていることもしばしば。それがこどものあるべき姿だと思いますし、そんなこどもらしさを大切にできる保育園にしたいと思っていました。
もちろん、現代において、私がこどもだったころと同じ環境をつくることはできません。いまの保護者は昔と違って忙しいですし、不審者からこどもたちを守るためにセキュリティ面を考える必要もあります。だからといって大人の事情ばかりを優先すると、こどもが外で遊ぶ時間が削られてしまいます。こどもたちをしっかり守りながら、こどもがこどもでいられることを第一に考えて、園舎づくりを進めました。
もうひとつ、以前の園舎を使っていた頃から決めていたことがあります。以前までの園舎はRC造だったため、全体的に冷たく、結露に悩まされることもありました。そのため、新しい園舎では木造にしようと考えていました。施工会社の方や大工さんは大変だったと思いますが、この園舎はほとんどの材料を国産の木材を使った建物です。梁を重ね合わせて強度を高め、縦と横の木材を交互に合わせて金物を使わずに組みあげられており、木造の美しさが前面的に押し出されています。
●「使い勝手」を追求しつつ、こどもが喜ぶ「遊び」のしかけを散りばめる
そうして完成した木造平屋建ての園舎は、こどもにも保育士にとっても使いやすく、なおかつ、こどもたちが喜ぶしかけがいくつも散りばめられています。
もともと玄関が2か所に分かれていたのですが、橋を渡るような場面が生活の中にあってもおもしろいと考え、二つの玄関をつなぐ土間に、平均台のような細い板や飛び石を配置しました。この土間は細長い園舎を横切る通路であり、こどもたちは保育室から遊戯室に移動するとき、必ずこの橋を渡ります。なかにはずっと橋を行き来して遊んでいる子もいるので、このしかけが功を奏し、楽しんでもらえているようです。この土間のおかげで、園庭へ向かうのも、下足のままで建物の反対方向に回らなくてもすむようになり、動線が途切れることもなくなりました。
「絵本の部屋」は、こどもの目線が途切れる設計にしていますが、これはこどもたちが読書に集中できるようにするための工夫です。穴蔵のようになっているほうが、こどもたちは読書に集中できると考えて、低い壁で囲い、掘り下げるようにしました。この掘り下げは、ベンチとしても使えるので、時々は迎えに来た保護者の方々が歓談するスペースにもなっています。こどもたちは読書に集中できるし、保護者の方々は交流の場として使える。まさに一石二鳥ですね。
●地域の「交流の場」であり、「要」として、人と人をつないでゆきたい
そのような、使いやすく、こどもたちが遊べる仕掛けの多くは、保育士の意見がもとになって生まれたものです。平屋建てにしたのも、「2階建てにすると目線が分かれてしまい、こどもたちのようすが見づらくなる」という意見を取り入れてのことです。設計するにあたっても、壁に釘を打てたりフックを付けられたりと、「生活のなかで利便性を追求し、自由にアレンジできるようにしてほしい」という要望を反映しました。
現在はまだ園舎が完成したばかりで、園庭には手を付けていませんが、今後は地域の方々と一緒に木を植えるなどして、園庭をつくりあげていきたいと思っています(平成29年11月23日に第一回植樹祭を保護者や子どもたちと行いました。)。当園はお寺の境内にある保育園ですし、社会福祉法人ですから、地域と地域、すなわち人間と人間をつなぐ存在でもなければいけないと考えています。今回の建て替えによって保育園とお寺の両方が地域の方々にとってもっと身近な存在となり、世代を超えて集まるきっかけになってくれたら、嬉しいですね。
大関保育園 園長 文珠康明先生